ネクロコのブログ

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「天気の子」に見る少年少女へのエール

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「天気の子」を観た。面白かった。

以下ネタバレ注意

ざっくらばんに言うと

主人公の少年帆高が世界の在り方を変えてでも、ヒロインを悲しい運命から解き放とうとする話だ。
特殊な能力を持ってしまったヒロイン陽菜との出会いから彼女を救い出すまでの過程を書いた映画である。

こう書くとめちゃくちゃよくある話に思われるだろうが、実質「感動作」なんて大体よくある話なんじゃないだろうか。
マンネリズムの中にあるから安心して感動できるのだとおもう。

元の世界を捨ててでも一緒に生きることを選んだ二人。ヒロインの陽菜の「晴れにする力」がどんなに人間にとって大切かは「晴れ女ビジネス」を通しても二人とも重々承知である。

「二度と世界が晴れなくたって良い、陽菜さんがいてくれればいい」

ビジネスで知った晴れの重要性、周りの人の存在なんか全て捨ててでも陽菜を救った主人公帆高はとても現代的な存在なのではないかと思った。

少し話は変わるが欅坂46は「アイドルらしからぬアイドル」として人気を博した。
歌詞は「閉じ込められた見えない檻から抜け出せ」、「周りの誰もが頷いても、僕は同調しない」などの社会の抑圧に対しての内容が多い。
現代を生きる子どもがどれだけ社会の中で不自由しているのか。貧困問題もさることながら、どんな組織でも上手く機能していなければ多くの被害を被るのは一番持ち物、選択肢の少ない子どもである。

ただただ過酷な現状を受け入れるだけで良いのか、自分の意思を押し殺して生きることに満足できるのか。

帆高も同じことを問われ、彼は「陽菜のいる晴れの無い世界」を選択した。

「一人の人間は救えたが雨の止まない世界」を取ることが出来た彼は、抑圧されがちと思われる現代少年少女の心を掴めたのではないか。
傍から見たら、功利主義で考えたら間違っていたって「そんなものはどうだっていいよ」と若者の背中を押す話に思えた。

また、結末は「晴れ」の素晴らしさを知っている彼らへの、本当のハッピーエンドにはならなかったように見えた。
けれど世の中にはリスクの無い選択肢などない。
傍から見たら「どっちをとっても完璧な幸せにはならない」という描写も、ファンタジー作品の中に現代のリアリティーを映し出したのではないだろうか。
(世界か彼女かを選ぶのだから、両方取れたら話の厚みが当然かなり変わってしまうが。)
そして、変わってしまった世界にゆっくりと順応しつつ生きていく人々の力強さに「人という寄生虫はただものじゃないな」と思った次第である。