ネクロコのブログ

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高橋留美子に見る才能と時代背景

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最近訳あってアニメ「境界のRINNE」を見ている。
「訳も何もこいつただただ暇なだけじゃないのか」と思った読者がいるならば、100%正解だ。純度100%の水が中々無いように、

・普通にアニメシリーズが全て終わり
・また誰かに進められた訳でもなく
・特に話題になっていた訳でもなく(私の周りでは)

だだ何となく知っていたので何となく見始めた、というのはまぁ暇100%状態じゃなきゃなかなか無いだろう。元々暇だったのがコロナで更に時間が倍増した。

時は金なりと言うが、その理論で行くと私はこの作品に最近課金し始めたという状況だ。
勿論課金しようと思うくらいに面白く、また作者自身について考えさせられることもあった。
今回は作者高橋留美子に見る時代と才能のマッチングについて語ってみようと思う。

アニメ「境界のRINNE」はらんまとかうる星やつらを描いた高橋留美子原作、最近まで週刊少年サンデーに連載されてたコメディー作品を映像化したものになる。
らんまとうる星やつらをちゃんと知らない人は軽くでも良いから読んでみてほしい、この後の流れがスムーズになるから。

内容を軽く説明すると、半死神のりんね君(主人公)がこの世に残る幽霊の悔いを成仏させることをコメディーに仕上げた作品である。

この一行で話の面白さを理解できる人なんて当然いないだろう。ただあんま長く語るのも面倒くさいので面白い点を一言で表すなら

「キャラがぐりぐり動く」

所にあると思う。
色々はしょりすぎたお陰で120%伝わってないと思うが、長くなりすぎない程度に順を追って説明していく。

・基本コメディー作品は一度に読み続ける、見続けると飽きがくるものだが、彼女の作品にはそれがない。

・コメディー作品全般に言えることだが、そもそも話なんて基本紋切り型なのだ。
というか紋切り型でなくなったとたん迷走のち破滅ルートである。(諸説あるのは一度置いておく)

RINNEは「霊が出た→諭しつつ除霊」の流れを、
らんまは「強いライバルキャラやらヒロインが出た→戦いのち仲間()やらんまに恋するキャラ()に」の流れを、
うる星やつらは「可愛いヒロインが登場したり脇役キャラ()が仲良く喧嘩したり→主人公がナンパして返り討ちに、脇役キャラ()が仲良く喧嘩したり」の流れを

続けているだけなのである。もちろんどの作品もこの要素のみで話が出来ている訳ではないが、話の主軸は上記の点にあると言っていいだろう。まぁ割と戦ってばっかだ。

・ではなぜ飽きないのかというと、1つにはキャラクターが動くが故に誰が主人公になっても大丈夫だと思わせる点にある。このキャラ同士の掛け合いはどうなるのだろう、と思う点が殆どない。

そしてキャラが動くのはどのようなキャラも立っている、そして各キャラとのかけ合いをものすごく自然に描けているからなのだ。1人の人間として紙面の奥で生きている。

・大体純粋なギャグ漫画ではギャグ要素を入れまくるが故に面白くても一気見は出来ないし、バトル漫画では本当に戦いばかりでも休憩を入れたくなる。

・キャラが動くことによりバトル要素なり口げんか要素なりがベースとして話が進んでいくためメリハリがつきやすいというのが一点にあるだろう。

そしてバトル要素、ギャグ要素のバランスの良さからなるテンポの良さが群を抜いているため飽きる余地が殆どない。

・第2に話の流れの予想がとても立てづらい。さっきの紋切り型と矛盾するじゃん、と思ったかもしれない。ただそれは話の起と結が予想できるだけであり、なんなら結も「このやりとり(ケンカ)で本当に誰か結ばれることは無いんだろうな」くらいしか予想できないことも多い。
というか起にいたっては予想も何もないが。

誰だって「この人の思考、行動を大体予測できる」できる人間は現実では中々いないだろう。
その「予測出来なさ」を体現しているのが高橋留美子の漫画であり、絶対にあり得ないようなフィクションのキャラなのにとても人間味が有るのだ。また多少知恵が回っても底が浅いキャラが多いため、底の浅さ、バカさ加減ががオチに使われたり話の起に使われることも多い。

りんねは過去作と比べて面白いと思われにくいらしく(私が検索した範囲では)、また私も昔の作品の方が面白いと思う。(個人の感想です)

それは「楽しいケンカを描かせたら日本一」くらいの才能が高橋留美子にあるからだろう。無鉄砲バカキャラを描く能力は本当に天才だと思うし、過去作に出てくるキャラは大体無鉄砲バカなのだ。

そして無鉄砲バカには無鉄砲バカになるが故の理由がある。皆愛だの敵を倒すだの目標に一直線なのだ。
そこに人間味があるが故の予測出来ないリアルさが増し、話が思いも寄らない方向に行くがそれは
人間のB面を見ているようなもので決してキャラを理解できない領域に行くことはない。本当に才能があるのだと思う。

最近のコンプライアンス的にはあまり気性の激しいキャラは受けない。なので大人しめのキャラが多いとされるRINNEでは牙を抜かれた獣、みたいに思っている人が多数派なのではないか。

何か能力があっても時代に受け入れられる/受け入れられないはやはりあり、特に漫画みたいな媒体での才能の芽はタイミングで評価されやすさが変わるのではないか。

しかし良いものは古びないと言うし、そもそも30年以上の漫画で笑えるのは本当に凄い。だが環境の異なる現代で同じことが出来るかといえば当然別物である。
どんな才能でもタイミングによって評価のされ方が変わることはあるが、時代に合わせて提供するものを変えられる人間は本当に凄いと思う。